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今日は何の日?

14日と言えば……(^^ゞ



「先生っ! いる?」ドアが開き、少年が飛び込んできた。
「あら、フェイ。いらっしゃい。あの人なら、今はいないわよ。」

「なぁんだ。先生、出かけているのか。」
フェイはため息をついた。

“ママー”
「あ、ミドリが呼んでいるわ。ちょっと待っててね。」
ユイが奥の部屋に行こうとすると、フェイがヒョッコリ後をついてきた。

「ユイさん。ミドリと何をしてるの?」
あまぁ〜い香りが辺りを漂う。チョコレートだ。

「あ、明日は14日だからね、あの人にあげるチョコレートを作っているのよ。 いちおー感謝の気持ちよ(笑)。」
ユイは屈託なく笑った。
「感謝の気持ちって、何?」
「ん? 明日、14日はね、好きな人にチョコレートを渡す日なの。 ミドリが“どうしてもパパにあげたい”って(笑)。」

「ふぅ〜ん。好きな人にチョコレートを渡す日かぁ。」
“湯せん”のお鍋に向かっているユイとミドリの後ろで、フェイは様子を伺いながら頭の後ろで手を組んで言った。
「……そう言えば、アルルも何かを作っていたような気がするな。 聞こうとしたら、“秘密よ(笑)”って言われたっけ。」

ユイが急に振り向いた。
「へぇ〜。あの子も隅に置けないわね。誰にあげるのかしらねぇ。」
「俺、知らないよ。」
「……でしょうね。(カン鈍そうだもの)」
“それにあの人の教育じゃ、なおさら……”なんて、口には出せないことを、つい思ってしまうユイであった。
娘には聞こえちゃうって、その声なき声。(^^ゞ





1ヵ月後

「先生っ! いる?」ドアが開き、フェイが飛び込んできた。
「フェイじゃないですか。いきなり、どうしたんです?」

「良かった。先生、今日は居たんだ。」
「何を言ってるんですか? ここは私の家ですよ。」シタンは笑った。
てくてく、フェイはソファーに腰掛けているシタンの真正面に立った。なんだか思いつめた様な顔をしている。

「……先生。あの……。」。
「フェイ?」
顔が目一杯まで近づいてくる。ちょっとビビり気味のシタン。フェイはこういう時の加減を、まだ、知らない。
「……先生。俺の気持ちだ。コレ、あげる!!」
フェイの手から出てきたのは、小さい小箱。

「俺が作ったんだ。とにかく、開けてみてくれよ。」心なしか、フェイの顔は朱(あけ)に染まってる。

「え? ええ……っと、もしかして“手作り”ですか……?」
(私は、どこかで教育を間違いましたかねぇ。フェイにだけは、“手を出さないように”してたんですが;爆)
さらに、ビビり気味に箱を開けるシタン。中から出てきたのは、ちょこれーと(笑)。

「……(コホッ)……これ……私に?」(やはり教育を間違えたようですね。さて困った……)

フェイは出すもんを出して、重石が取れたのかニコニコしている。
「先生。食べてみてよ。」

どうしたものか……と、ふと、思いついてフェイに聞いてみる。
「ところで、どうしてチョコレートなんですか?」

「今日は14日だろ? 俺、この前ユイさんに聞いたんだ。14日には、 好きな人に感謝の気持ちをこめてチョコレートを送るんだって。 だから、俺。いつも感謝している先生にチョコレートをあげようって思ったんだ。」
そう言うフェイの“おめめ”は、まるで子犬のようにキラキラと輝いていた。

(あ、そういうことでしたか……)
ちょっと嬉しいような、少し残念なような、心中フクザツな気持ちのシタンである。

「フェイ。貴方の言っている14日は、2月の14日のことですよ。 それに、その日は女性から男性に愛を告げる日なんです。」
「じゃあ、今日は? ティモシーは朝から箱持って、落ち着きなくウロウロしてたよ。」
「今日は3月14日。女性からチョコレートを受け取った男性が、お礼をする日なのです。」
別な意味でフェイの顔色が、みるみる赤く変わっていく。……“ゆでだこ”に。(^_^;)

「じゃあ、俺は……?」
「貴方の勘違いのようですね。貴方にいいかげんな説明をしたユイにも、よく言っておきますよ。」
「い、いいよ。俺、恥ずかしいし。黙っててくれよ。」
フェイは落ち着きなく、本当に困っているようである。 その姿がなんだか可愛くって、つい愛らしく思ってしまうシタンである。

「では、せっかく頂いたのなら、このお礼をしなくてはなりませんね。」
「お、お礼〜?!」
「ちょうど今日は、“お礼をする日”ですから。」
「(なんかイヤな予感……)お、俺、いいよ。帰る!」

逃走を図ろうとするフェイの前に、シタンはすばやく回りこんだ。
「ふっふっふ……。逃がしませんよぉ。(ユイとミドリは今日は帰りませんしねぇ)」
シタンのメガネが妖しく光る。

……その後、たぁ〜っぷりと……



……シタンの手料理を(半ば無理矢理)食べさせられた哀れなフェイでありましたとさ。

あとがき:
2月16日あたりに思いついた「チョコねた」です(爆)。
やっぱり、イベントを過ぎたあたりで思いつくらしいです(笑)。 シタンにチョコを渡してしまう、ちょいと間違ったフェイ。ほのぼの系シタフェイ。(^_^;)
(間違ってない間違ってない、私は正しい;違)
しかも、1ヶ月遅れってとこがミソ。
出来はともかく(爆)、笑って読んでやってください。お願いします。

そんで、さりげなくアルルとティモシーの仲は進展していくのでありました。(*^^)v