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悪○退散!!

四月のお約束ってことで



「若! 少しは人の話を聞いてください!」
「やっだよー! いつも、どーにかなってんだから、いいだろーっだ(笑)」
「若!!」
「やなもんはヤダ!」

ビリーは見ていた。


「……シグルド殿? 若の補佐をよく勤められてますぞ。 ただ、肝心の若があの調子では……。シグルド殿もよくやってくださるのですが。」

メイソン卿は、そう答えた。



「若とシグ? うん。ボクが知っている限り、ずっとあの調子だよ。 ユグドラシルの名物コンビだよ。シグって面倒見がいいし。 でも、あれじゃ、シグも気の休まる時がないんじゃないの? 若は しょっちゅうトンズラこいてるけど、シグが休んでいるトコは見たことないよ。」

マルーも少し、心配してる。



「バルト? ああ、俺が知っている限りあの調子だ。 2度も俺たちに向かってバルトミサイルをぶっ飛ばすし。 あいつ、その場の勢いだけで生きてるんじゃないか? 
……シグルドさん? 俺はよく知らないが、いつもバルトの後始末をしているみたいだぞ。」

フェイは、呆れていた。



「ビリー君、珍しいですね。シグルド? そうですねぇ、貴方の言うとおり、 私が知っているユーゲント時代に比べて、彼は大分変わりましたねぇ。」
「そうですよね。それってあいつのせいですか?」
「あいつ? ……ひょっとして、若くんのことですか?」
シタンが急に、何かを思いついたように、ビリーに顔を寄せ、小声でささやいた。

「ビリー君。知っていますか? ……実は、若くんには、ファティマ家の“呪い”が 憑いてるんですよ。」
ビリーの目は真ん丸。
“呪い”って?

「……アヴェでねぇ、太古の遺跡が発掘された直後からなんですよ。 アヴェが騒乱に巻き込まれたのは。結局ファティマ家は、彼を残して、 ほぼ滅亡してしまいましたからねぇ。唯一の生き残りの若くんは、あの調子ですし。」
「……。」
妙に思い当たるフシがあるのか、ビリーが黙って聞いている。

「遺跡発掘当初はすいぶんと反対意見もあったようですが、 スレイブジェネレーターが大量に見つかって以来、教会が進出してきて、 やたらめったら掘り返していたようですね。 ……おや、貴方には若くんの背中にある“影”が見えないのですか? あんなにハッキリ しているのに。」
シタンが笑顔でサラリと言った。

ドキ! ビリーは“見えない”とは、エトーンとしてのプライドにかけていえなかった。

そーゆービリーを見て、シタンはさらに、イジワルそーに言う。(^^ゞ

「死霊の一種かと思っていたんですが、まさか、“専門家”の貴方に見えないってことは、 ありませんよねぇ。」
「……。」ビリーの内心は、どーすりゃいーんだ状態。

「そうですねぇ。死霊ってことは、おそらく退治できますよ。 ただ、普通の死霊と違い実体が無いようですから、 “御祓い”で取り除くことになるでしょうね。」
御祓いって何? と、ビリーの身体が無意識に、前のめりに。

「えーっと、確か……。ビリー君、今資料を探し出しますから、そこで少し待っていてください。」
シタンは笑顔で、本箱から何かを探し始めた。
「あ! ありましたよ。“悪魔祓い”の方法。」





ユグドラシルの廊下。シタンの後ろから、声をかける者がいる。
「ヒュウガ! お前、ビリーに何かを吹き込んだろう。」
振り返るとシグルド。眉間に深ぁ〜い縦ジワを寄せて。
「ああ。シグルド。何かありましたか?」

シグルドの眉間のシワは、ますます深く。(-"-)
「……“何かありましたか?” じゃないだろ! ビリーのことだ。」
「ああ。ビリー君ですね。彼は素直な子ですねぇ。とても、あのジェシー先輩の息子だとは思えない。」

はぁぁぁ〜〜〜、シタンの返事に怒る気も失せたようなため息をつくシグルド。
「そのビリーをかついだのは、お前だろう? あの儀式。 ここ数日、ビリーは朝から晩までずっと部屋にこもったまま、 ワケの分からない呪文を唱えっぱなしだぞ。」

黒い妖しげで悩ましい衣装(想像にお任せします)をまとい、不思議な魔方陣の上に立ち、 半眼のまま真っ黒い分厚い本に書かれた不思議な呪文を、朝から晩まで休まず唱え続けるビリー。
悪魔祓いなのか、それとも黒魔術をやろうとしているのか、 見た目ではちっとも区別がつかない。
……というのも、シタンがビリーに渡した資料は、そもそも“ジョーク資料”だったのである。

「ああ。まさか、あそこまで本気にするとは、私も思いませんでしたよ。」
「ビリーは、先輩と違って子供の頃から冗談が通じないんだ!!」

でやっ!! とうっ!!
「……また始まった。」
シタンに担がれてるとは知らないビリーが、 壁と人形に向かって蹴りを繰り出している。
ジャズダンス、ヒップホップダンスにバック転。背中でクルクル回って。
その後は、まるで花笠音頭……その後は炭坑節。ついでに“東京音頭”もつけておきましょうか?
さらに、(日本で言うところの)ラジオ体操第一、第二が続く……。
額からキラキラ輝くさわやかな汗を流し、大真面目な顔をして「深呼吸」の動作を懸命に行うビリーが、 少し可愛いかったりする。(^_^;)

「若いっていいですねぇ。」



そーじゃねーだろっ!!!!!

あとがき:
とっても可愛そーなビリー君の巻でした。ビリーファンの方、ごめんなさい。<(_ _)>
ゼノギアスって「アレン君」のような「オチ担当」がいないので、誰にしていいか困っちゃったんです。(^^ゞ
何せ4月ですから、ジョークネタの一つも……と頑張ったら、こんなんなっちゃいました。 その後、真実をシグルドから聞かされたビリーが、シタンに苦情を言いに行くんですが、 逆にシタンに丸め込まれて、さらにワケの分からないことをやらされちゃったりします(笑)。
これも一途に「シグルド兄ちゃん」のためです。やっぱり可愛いですねー。