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お嬢様

フェイエリのパロディです



平和の訪れたゲームエンディング。
……復興久しい某ラハン村に、幸せに包まれた二人が住んでいましたとさ。



もわもわとあたりに広がる、暖かい湯気。ぷ〜んと美味しそうな香りが漂う。

「ただいま〜。」
くんくん、とフェイが鼻を鳴らす。

「お帰りなさい、フェイ。」ぬれた手を拭きつつ、エリィが出迎えた。
「今日の晩飯、なに? あ、これ。おみやげだよ。ユイさんが二人で食べて、てさ。」
「なぁに? お団子? 嬉しいわ。ありがとう。」

にっこりと微笑んだエリィの視線が、ふと、フェイの小脇に抱えている2冊の本に止まった。
「フェ、フェイ……その本。」エリィがおずおずと聞いてみる。なんだかエリィの様子がおかしい。
「ああ。エリィも読むかい? 絵画についての本だよ。先生から借りてきたんだ。」
「そう……先生……ね。」フェイの明るい返事に対し、さらに不信を募らせるエリィ。

(エリィ。貴方は知らな過ぎます。フェイだってこういう類の本を、 タンスの奥とか、あと表紙を差し替えて堂々と本棚におくとかする方法で、 絶対にかくしていたりしますよ。仮に見つけたとしても、見てみぬフリをするんですよ。)

……その「先生」本人に言われた言葉が、エリィの脳裏によみがえる。

……ま、さ、か、ね。毎日掃除をしているのよ……そんなはずはないわ。

エリィが意を決して聞いてみた。
「ねぇ、フェイ。私に洋服ダンスとか、本棚とか、絵の道具箱の底とか、見られても平気?」
「はあ? そんなとこ見てどーするんだよ。へそくりなんて隠してないぞ。」フェイは笑った。
……先生直伝の「ニッコリ」だわ……ますますあやしい、エリィはそう思った。
(ところで、タンスなんてあったんだ、この家;爆)

「エリィ。」急にフェイの顔が険しくなった。
「(え?)……。(そのめ怖いわ)」
「俺に対して、何か疑ってるだろ。」
「え? ええ……っと、おほほほほほほほほほほほほほほほほほほ……。」
「(急に、お嬢様になったな。エリィ。)」
フェイの凝視が続く。心なしか髪の毛に赤みがさし、毛が逆立ってきている。
「ええっと、何でもないの。気にしないで。本当によ。おほほほほほほほほほほほほほほほほ……。」

延々と、“へび”と“へびににらまれたかえる”のにらめっこが続く。

がっくり。
エリィが“にらめっこ”に負けて肩を落とした。

(イドモード発動怖いもの……)
「あのね。先生が……。」
「先生が?」
「フェイも男だから“桃色草子”みたいな本を隠しているに決まっているって 言うものだから、ちょっと思い出して。」
「あのなぁ…。」
「あ、いいの。いいの! フェイだって男だし。それは私がよ〜く知っているし(自爆)。 それが普通なのよね。うっかり見つけても見ないフリするから、安心して!!」
目の前でわたわたと両手をふり、滝汗を流しながら盆踊りをするエリィ。

「……どこを探しても平気だよ。持ってないもん。」はぁ、とため息混じりにフェイは言った。
「そんなお金があったら、食費に入れるよ、ちゃんと。」
「そ、そうよね。(生活苦しいし)。ごめんなさい。」
「分かってくれればいいよ。分かってくれれば。」先生直伝のニッコリ炸裂!!!

フェイの去りしな。エリィがポツリ。
「でも……“桃色草子”がどんな本か知ってたのね。フェイ。」
ぎゃふん!!!!

……先生〜! また、エリィを担いだな。明日覚えていろよ!……



「ふぇーくしょーんっ!!!」
「あら、貴方。風邪なの?」
「そんなはずは、ないんだけどなぁ。」ズズっと鼻をすするシタン。
こちらは食後。リビングで皆でのんびりしているシタン一家。

「じゃあ、フェイたちが貴方の噂でもしてるんじゃない? エリィ、あの時相当ショックを受けてたわよ。 貴方がよりによって“一番強烈なやつ”を見せたりするから。」
「見せたわけじゃありませんよ。エリィが勝手に見つけたんです。」
「あんな目立つところに置いておくからよ。」
「教育の一環ですよ。教育!! エリィはお嬢様育ちですからね。」
「……教育ねぇ。(ホント、よく言うわよ)。あの後、耳まで真っ赤になってるエリィに、 延々と講義していたのも教育なの? ……それも楽しそうに。」
「そうですよ。男というものはですねぇ……」シタンは胸を張る。

「はいはい、若い女性をからかうのは、もうその辺でいいから。とにかく、ミドリに見つからない場所において置いてね。 それこそ、教育上よろしくないから。分かったわね。」

「(……もう、手遅れ。)」
シタンとユイが聞いたら卒倒しそうな台詞を聞こえないようにつぶやく、娘ミドリであった。



平和の訪れたゲームエンディング。
……復興久しい某ラハン村に、幸せに包まれた人々が住んでいましたとさ。



お・し・ま・い

あとがき:
彩雲国物語の秀麗と静蘭の桃色草子会話があまりに面白かったので、ゼノギアスのパロディの 下敷きに使わせていただきました。あはは。(^^ゞ
ぎゃふんの後、にっこりと笑って「よし。明日、たんたんくんに地獄の〜。」と(心の声で)さらりと 言ってのけた静蘭(=○川さん)が素敵過ぎたんです(爆)。
そういや、緑○さんつながりは初めてでしたね。うーん、フェイはあんまり重要視して なかったからなぁ(爆)。私には先生のオマケという位置づけ。(^_^;)
エリィは1級市民(=お嬢様育ち)だから、そういう本に縁が無かったんですよ。きっと(笑)。
生物学的見地(爆)では、困らない程度に知っていたんでしょうけどね(ゲーム参照)。
おとーさん、おかーさん。娘に見られて説明できないものは、きちんと片付けておきましょうね。o(^^)v