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暑中お見舞い申し上げます。





−−−暑中お見舞い申し上げます−−−


(フェイ、シタン) 暑中お見舞い申し上げます。

(フェイ) 何だい? 暑中見舞いって。

(シタン) フェイ。自分で挨拶しておいて、何を言ってるんですか。暑中に知人、友人に手紙を出して その安否を確認すること、またはその手紙を指すんですよ。

(フェイ) ふーん。そうなんだ。でも、これはメールだよ。

(シタン) そんな細かい事はどーでもいーんです。お世話になった方々へのご挨拶なんですから。

(フェイ) じゃあ、俺達が挨拶していいのか?

(シタン) いいんですよ。風子さんの堅苦しい挨拶よりはマシですからね。

(フェイ) そうだね。あの人、言葉を使うのが下手だからねー。

(シタン) ところでフェイ。日本の夏のイベントに、お盆というものがあるのをご存知ですか?

(フェイ) うん。夏の民族大移動のことだろ? 飛行機とか、新幹線とか、高速道路がやたらと混むやつ。

(シタン) ちょっと違うんですけどね……。

(フェイ) じゃあ、何だい? 先生。

(シタン) 祖霊を死後の苦しみの世界から救済する為に行う行事のことです。具体的には、 祖先の霊や、亡くなった方の霊等に供え物をして、その冥福を祈るわけですね。 行う時期は、7月、8月など地方によって異なるようで、元々は旧暦の7月15日だそうです。

(フェイ) 詳しいね。先生。

(シタン) 調べたんです。

(フェイ) 風子さんは8月15日だと思い込んでいたみたいだね。

(シタン) それはまあいいとして、私達もやりましょう。

(フェイ) え? ここはゼノの世界だよ。誰を供養するのさ。

(シタン) 当然、祖先の霊でしょう。

(フェイ) 俺達の祖先をたどると、みんなデウスとカインとガゼルにたどりつくよ。 まさか、それを供養するのかい?

(シタン) 天帝はともかく、ガゼルはやりたくないですね……。 彼等が祖先というのも、何だか情けない気がしますが。

―――シタン先生、考え中―――

(シタン) そうだ。フェイ、貴方を供養しましょう。

(フェイ) は?

(シタン) そもそもの発端は貴方なんですからね。アベル。

(フェイ) 急に呼び名を変えるなよ。確かに1万年前に生きていたときに、 そんなことがあったけどさ。でも、俺、今、生きてるぞ。

(シタン) 生き仏ってのもあるでしょう。

(フェイ) 意味がちがーう!! 生きていたらサマにならないじゃないか。

(シタン) そう(にっこり)。仕方がないですねぇ。

(フェイ) な、なんだよ! 刀なんか抜いちゃってさ。止めてくれよな。

(シタン) 貴方に死んで頂きます。覚悟しなさい。

(フェイ) かんべんしてくれーーっっ! (ダッシュで逃げ出す)

(シタン) 待ちなさい。フェイ。


―――暗転―――





おそまつさまでした。