TOPへ戻る 目次へ戻る

冥き黎明




………

ア……

……ル

………

―――船が行く―――

………く……ん…。

―――無数のきらめきを縫うように―――

………君。

―――死の闇が垂れこめた場所から―――

………君。我々に教えてくれないか?

―――未だ生命の満ち溢れるところへ―――

………クスン………。

―――何かを恐れるように―――

あの時、何が起こったのか?

―――逃れるように―――

どうして君だけが生き残ったのか?

―――急げ―――

あの場のものは、全てメルトダウンしたのに。

―――急げ―――

………局長、無理ですよ。

―――急げ―――

こんな幼い子供に、どんな説明ができるというのですか?

―――だが―――

現にまともに口が利けないでいる。何が起こったかは………

―――どんなに急(せ)いたところで―――

………おそらく、この子自身にも分からないことです。

―――死を逃れる術はない―――

しかし、あのトラブルの後だぞ。“あれ”が暴走を始めたのは。

―――それが定められたものならば―――

………確かにそうですが、それとこれとは………

―――なおさら―――

分かってる。ともかく少しでも情報が欲しいのだ。プログラムの解析は進んでいるのか?

はい。今のところ特に異常は見つからないそうです。

そんなバカな………。




大変だったわね。震えているの?

―――船が行く―――

怖い……。

―――死の御使いを連れて―――

あの人たちが怖かった?

―――今も―――

ううん。誰かが僕の名を呼ぶんだ。

―――死の序曲は―――

頭の中で声が響くんだ。とっても怖い……。

―――奏でられ続けている―――




「ねえ。知っている?」

「何を?」

喫茶室―――乗員達のざわめきで埋め尽くされた場所

「“あれ”がここにあるって噂。」

―――なんひとも―――

「まぁっさかぁ。確か、軍によって破壊されたんだろ? ハハハ。」

―――その手に握られた鎌から―――

「そうよねぇ。だから私達、助かったのよねぇ。」

―――逃れる術(すべ)は無い―――




エルドリッジ・ブリッジにある全てのモニターが鳴った―――

滅びの刻(とき)を告げる

―――音―――

ゼノギアスのオープニングムービーを見ながら、なんとなく書いてみた原稿です。 本当は軍に自分の星を見殺しにされた人が 自分の復讐のために「システム」を再起動してしまう話にするつもりたったのですが、 あっさり「挫折」しちゃったんですねぇ。 でも、出だしの雰囲気がなんともいえず、自分的にヒットしちゃったので もったいなくて出だしとしっぽだけUPすることにしました。 (可哀想にイノウエさん、カットになっちまいまいした)
コレ、実はなんと「2000年8月」に書きかけた原稿だったりするんですね。 我ながらマジ驚き。ファイルのプロパティ見てひっくり返りました。 全てはユングのいう共時性の仕業か???(嘘)
そんなわけで、この文章のアベルはあくまで「普通の子」です。 だって、あんな設定があるなんて知らなかったもの。 それにしても頭ん中に声がするとこまで……(笑)。
それに、アベルに話しかける女性は、助手クラスの人を想定していたのですけど、 ゼノサーガをクリアしてから見ると、なんとなく「ユリ・ミズラヒ」さんに 聞こえてくるから不思議ですね(苦笑)。 私の頭の中では、アベルに話しかける優しげなユリさんの声が響いてマス。 でも実際の話、UPのために手を入れたのは「現にまともに口が利けないでいる」という セリフと最後の3行だけ。元は「現に泣きじゃくってばかりいる」でした。 ちょっとゼノサーガのアベルとは外れすぎてしまうので、 「泣きじゃくる」を「口が利けない」に直しました。ゼノギアスのアベルは、 砂漠で泣きじゃくってましたね。

そんなワケで、初稿タイトル「オープニング」を「冥き黎明」に変更してUP。 さすがに原作のような吸い込まれるようには書けないけど。 むしろぶち壊している、とか(爆)。逃げっ!