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ミドリが口をきかない理由





おもむろにヒュウガが言った。

「ユイ。数日後に地上に降ります。そこで……。」
「そこで?」聞き返すユイ。
「ミドリに予防接種をしたいのですが。」
「予防接種?」
「そう。ミドリはまだ1歳だし、地上には、まだまだ恐ろしい病気がたくさんあるので。一応、済ませておかないと、心配でね。」
「分かったわ。今、連れてきますね。」



「連れてきたわよ。」
久々に父親の顔を見てニコニコ笑うミドリ。これから起こることも知らないで。

「ユイ。左腕でミドリの身体をしっかり抱えて。」
「こう?」
ミドリを膝の上に座らせて、ユイが聞いた。
「そう。そして、右手でミドリの右手を支えて……。そう。」
ミドリは何か面白いことが始まるんじゃないかと、眼をキラキラさせていた。

真面目な顔をしたヒュウガは薬の入った注射器を取り、針先から液を滴らせた。
「ユイ。動かない様にしっかり支えていて。」
「はいはい。」

「まずはポリオ。」
ブシュッ!
「う……。」顔をしかめるミドリ。
「は〜い。痛くない痛くない。ミドリは強い子だもんね。」
慌ててユイが機嫌を取る。

「次はジフテリア。」
ブシュッ!
「うう……。」さらに顔をしかめるミドリ。
「は〜い。痛くない痛くない。ミドリは強い子……。」

「次は風疹。」
ブシュッ!
「ううう……。」ミドリは涙目。
「は〜い。痛くない痛くない……。」

「次は破傷風。」
ブシュッ!
「ふ、ぎゃ……。」もうミドリは泣きそうだ。
「……。」

「次は……。」
「ちょっと待って!! ヒュウガ。貴方、何本注射するつもり?」
ヒュウガが怪訝そうに顔を上げた。
「大丈夫。何本打ってもちゃあんと副作用の無い様にしてあるから。あと、 百日せき、脳炎、結核……まだまだ、打たなきゃならないのがたくさんあるんだよ。」
「それもそうなんだけど……大丈夫かしら?」

ブシュッ!
「ふんぎゃぁーっ!!」とうとうミドリが爆発した。
「ほら、ユイ。暴れない様に押さえて。」
「はいはい。……私、知ぃらないっと……。」

この後、ミドリの泣き声が延々と続くのであった。





3年後

「ユイ。どうして、ミドリは口をきいてくれないのかなぁ。」
シタンがため息をついた。
「……自業自得よ……。」ユイがポツリ。
「え? 何か言った?」
「なーんにも。それよりどうしたの? そんなもの準備して。」
シタンの手元には注射器。

「ええ。最近、ラハン村に水ぼうそうが流行っててね。ミドリを呼んでもらえますか?」
「貴方。まさか、それ……。」
「感染するといけないから予防接種をしておこうと思って。」

「……懲りない人。」





―――おわり―――






こーんなこと考えながら、娘の予防接種を済ませた風子です。
あ、残念ながら先生は女性でした。
尚、子供の支え方は、そのとき指示されたものです。

☆予防接種予備知識(厚生省、予防接種と子どもの健康より)
日本で予防接種の対象となる病気
ポリオ、ジフテリア、百日せき、破傷風、麻しん(はしか)、風しん、日本脳炎、結核
尚、ジフテリア、百日せき、破傷風は3種混合で接種します。
接種間隔
生ワクチン接種後は4週間以上開ける。
不活化ワクチン接種後は1週間以上開ける。
ということで接種間隔は守りましょう。
尚、家族と海外で暮らすことになり、異なった種類のワクチンを特に急いで接種する場合は、 医者の指示により同時接種が出来るそうです。(^^)
ふつー1度にやらないと思うけどね。