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マルーの秘密





ユグドラシルの朝―――
タコ部屋で朝食を摂るのが決り。


「………。」
プリムがジャムの蓋と格闘している。

「プリム。もしかして蓋が開かないの?」
コクリ
プリムは可愛く頷いた。
「ははは。プリムはまだ小さいからね。それ、僕にくれる?」
ビリーはジャムのビンを受け取った。

どこにでもある兄弟の微笑ましい風景。

「こんなの簡単だよ……。……あれ? ……おかしいな……。」
ビリーがいくらやっても蓋が開かない。

「ビリー。ちょっといいかな。」
見かねたフェイが手を伸ばす。
「うん、いいけど。」
ジャムはフェイの手に。

「これにはコツがあるんだ。よっと。……あれ?」
手が滑るだけで、蓋は少しも回らない。
「中で固まってるのかな。」
皆、首を傾げる。マルーを除いて。

「フェイ。ボクに貸してよ。」
「マルー。フェイでも開けられねぇのに、お前が開けられるワケねぇだろ。」
バルトが止めようとするが……。

「大丈夫。昨日、最後に使ったのボクだもん。」
マルーはフェイの手からジャムをさっと取り上げる。

パカン!
マルーの手の中で、あっさりと蓋が開いた。

(え゛?)

疑惑の視線がマルーと、そしてフェイに注がれる。
(ホントに開かなかったんだよ)
フェイは皆の視線に、必死で身振りだけで答えた。
「フェイ! 変な演技をするなよ。みんな本気にしちまうだろ。朝っぱらから悪ぃ冗談飛ばすな!」
ばん!と、バルトがフェイの背中を張り飛ばした。





食後

「……チュチュ。」
フェイがチュチュを呼び止めた。
「何でチュか? フェイしゃん。」

「チュチュ。お前、体重何キロだったっけ?」
「年頃の乙女にそんなことを聞いちゃダメでチュよ。」
「そうか。そうだな。」
フェイは一つ頷くとチュチュを抱き上げた。

「フェイしゃん。チュチュ、恥ずかしいでチュ……。」
チュチュは、もともとピンクの身体をさらに真っ赤かに。

「……かなり重いな。」
フェイは聞いてない。

(たしか助け出した時、軽々と持って走っていたような気が……)



「マルー……頼むから人前でああいうことするのは止めてくれ。」
「何のこと?」
「ジャムのフタだよ。フタ!」
「いいじゃない。開いたんだから。」
「よくないっっ!」

バルトの剣幕にマルーの眼に涙が光る。

「ボク……少しでも若達の役に立ちたいんだ。だから……。」
マルーの殺し文句炸裂。

「だから、部屋の中にこんなもん持ち込んで毎日鍛えているってか。」
バルトは足元の物体を蹴っ飛ばした。

「そうだよ。悪い。」
開き直るマルー。
「悪い! お前がどんなに頑張ってもパーティーには参加させないからな。」
「若。あんまりボクのことを閉じ込めてばかりいると、ここの壁蹴破って出て行くからね。ボクだって冒険したいんだから。」

「……お前は、ド○クエ4のア○ーナ王女かよ……。」