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暑い!!





「あちー。」

「おい、カール。そのカッコどうにかならないか?」
ラムサスは下着一枚になり、パタパタとうちわで扇いでいる。
冷暖房完備のユーゲントのはずだが、部屋のクーラーが壊れてしまったのである。

「うるさいっっ。お前のカッコよりマシだ。へそ出しの上にピアスまでつけて……。」
ラムサス、シグルド共に、かなり不快指数が高い様子だ。
「むっ。俺のはファッションだ。だいたいソラリス人でもない俺が、何でこんなもんを真面目に着る必要がある?」
「まともに着たら似合わないんだろ、所詮ラムズだな。」

「何を!!」
「やるか?」

「はいはい、2人ともそれ位にして下さい。ただでさえ暑いんですから。」

「ヒュウガ。何でお前だけ、そんなに涼しい顔をしてるんだ!!」2人の声が和音を奏でている。

「涼しくなれる箱を作りましたから、皆で入りましょう。」
「???」



黒い大きな箱。3人くらい楽に入れそうだ。
「一度入ったら2度と出られなくなる……なんてことないよな。ヒュウガ。」

シグルドもラムサスも、丹念に箱の周囲を点検する。特に罠ではなさそうだ。ヒュウガはそーゆー意味で、彼等に信用があるのだ。だいたい、ヒュウガがクーラーを修理させてもらえないのも、その信用のせいである。修理のついでに、必ず余計な事をするから……ふつーに修理してくれりゃーいーのに。
2人のそんな様子を見て、ヒュウガは半ば呆れ顔である。
「……2人とも、私を何だと思ってるんですか?」

「変なヤツ!!」また和音を奏でている。

「あのねぇ……。」
「どうやら大丈夫らしいな。」2人の意見は一致した。
ヒュウガを含めて3人は中に入る。

「おっ涼しい涼しい♪」
すっかり2人ともくつろいだ。

「ちょっと狭いけど、トランプくらいは出来るだろ。」
「なんでトランプなんだよ。」
「まさか、ごろ寝するわけにもいかないだろ?」
中は2畳程の広さ。3人で寝るにはちと狭い。




ひとしきりトランプで盛り上がった後、しみじみと中を見回してみる。壁には冷却装置らしきものは見当たらない。冷気は上から降ってくる。上か……むくむくと好奇心がもたげてきた。

「ヒュウガ。これはどうやって冷やしているんだ?」
「内緒です。大した物じゃありませんよ。(にっこり)」
内緒と言われれば、知りたくなるのが人の常。2人は、外から箱の上部によじ登った。

「ここに取っ手があるぞ。」
「引いてみるか。」
あっそれは、というヒュウガの制止も聞かずに、2人は扉を開けた。

“ビシャ!!”

「うわぁ。」
勢いよく飛び出した水が2人を襲う!
転げ落ちた2人の上に、無情にも無数の氷が降り注ぐ―――――。



2人は、魚屋の魚よろしく氷付け。

「あの……生きてます?」



「ひ、ひ・ゅ・う・が〜〜〜。なんだコレは?」またまた和音を奏でている。つくづく気の合う2人である。

「エコシステムと言って下さい。物体の融解熱および気化熱を利用した、素晴らしいアイデアだと思ったんですけどねぇ。」
「おまえなー。最初から、氷を部屋に置きゃーいーだろっっ。」
「空間は小さいほど、効率よく冷却出来るんです。第一、ここを水浸しにしたのは、私ではなく、あなた方じゃないですか。」
全くヒュウガの言う通りである。この事態を引き起こしたのは、この2人なのだ。

「じゃ、私は図書館に行ってきますから、後片付けをお願いしますね。」
ラムサスとシグルドは、ポツンと取り残された。いつも、なんとなくヒュウガの尻拭いをさせられる2人であった。



「これ、片づけるのか?」
「やるしかないだろ。早くしないと、下の階まで染みるぞ。」
ふきふきふきふき………。



「おい! お前ら何やっている。」
もっと厄介な人物が来た。頭を抱える2人。
「掃除です。ちょっと水をこぼしてしまいまして。」

ジェシーはニヤリと笑った。
「ちょっとどころじゃなさそーじゃねぇか。丁度いいや。そこが終わったら、次、俺の家な。頼むぜ。」
「え?」

「せっかく、ヒュウガと食堂から氷をくすねてきたっつーのに、ビリーのやつがひっくり返しちまってな。頼んだぞ。」



どーりで、ヒュウガが氷を沢山持っていたわけだ………はぁ。



(じゃんじゃん!!)