神の旅立ち2
−フェイ− エリィ……。
−エリィ− フェイ……私を解放してくれたのは、カレルレン……。
−フェイ− カレルレンが……?
−エリィ− ええ。カレルレンと一つになって解ったの。彼の心は悲しみに満ちていた。だから彼は私との、神との合一を願った……。
それがすべての原点への回帰だったから……。彼が言ってくれたの……あなたと一緒に居るべきだって……そう言ってくれたの……。
私は解っていたわ……私の想いも、あなたの想いも……。でも、どうしようもなかった……。
人であることを、全ての想いを捨ててでも、彼は前に進むしかなかった……。全ての人の為に……。決して後戻りは出来なかった……。
振り返れば、そこは思い出で一杯の場所だから……。そこに……還りたくなってしまうから……。だから、彼を赦してあげて……。
カレルレンは誰よりも人を愛していたのだから……。
−フェイ− そんなこと……そんなこと、はじめから解っていたさ。あいつがそういう奴だって事ぐらい……。
−エリィ− ……ごめんなさい……。私は間違っていたのね。私は、自分を犠牲にしてでも、他人を救うのが正しいことだと思っていた。
でも、私の行為は、遺されたあなた達の心の中に悲しみを残すだけだった。その悲しみが、また新たな悲しみを生んでしまった。
私という存在があなた達の中にも生きている以上、私の命は私だけのものじゃない。
−フェイ− エリィ……それは間違いなんかじゃないよ。誰かの為に、自分を捧げるのは尊いことだ。
それがたとえ自分の為であったとしてもそんなことは問題じゃない。そこには必ず、癒されている人が存在するのだから……。
愛は、与えるものと受ける者、二つの関係があってはじめて本来の輝きを成すもの。そう、教えてくれたのはエリィじゃないか。
それが人であることの意義なんだと俺は思う。今の俺にはその大切さが理解出来る。正しい答えなのかどうかはわからない……
でも、そのことについて考える時間はたくさんあるよ。カレルレンが見つけようとしていたもの……答えは……俺達が見つけよう。
−エリィ− ありがとう……フェイ。
−フェイ− エリィ……
−フェイ− 還ろう、僕らの星に。
−エリィ− あの光が……私達の世界との接点。でも次元シフトはもう始まっている。果たして間に合うかどうか……。
−フェイ− 走れるか?
−エリィ− ええ、あなたとなら……。
−フェイ− エリィーーーッ!!。
−フェイ− カレルレン……お前。
−カレルレン− もう時間がない。ここもじきに消滅する。
−カレルレン− これで神はいなくなる。この星は人の惑星……自らの足で歩むお前達の故郷だ。
−フェイ− カレルレン……行けないのか?
−カレルレン− ああ……私はあの時を境にして、人としての道を失った……。
−カレルレン− 多くの禁を犯した……もはや人として生きることは許されまい。私を許してくれるのは神のみなんだよ。
−フェイ− そんなことはない! きっとみんなだって解ってくれるさ。罪滅ぼしの時間だってたくさんある。
お前にならそれが出来るよ。
−カレルレン− 相変わらず優しいんだな、ラカン。……きっとそれが人であることの意義なんだろうな。
だが行けないよ。もう決めたことなんだ。……私は神と歩む。それに、たとえ還ったところで……私の居場所など……。
−カレルレン− そろそろ行くよ。
−フェイ− カレルレン……。
−カレルレン− お前達がうらやましいよ……。
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