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遠い日の記憶−たき火


−ロニ− まあ、食ってくれ。最近じゃこういったものは、手に入らないだろ? まぁ、これも、 この俺の商才のなせる技かねぇ。

−レネ− ……どうした? ラカン。何、気難しい顔をしてる? 悩み事でもあるのかい?

−ラカン− ……いや、例のソフィアの肖像画の話さ。なぜ、肖像画を描くことを承知したのか わからないってね……。

−レネ− ソフィアって、お前の幼なじみだったっていうニサンの聖母のことかい?

−ラカン− 幼なじみないていうほどのものじゃない。ただ子供の頃、俺の自宅近くの修道院に療養に 来てた時、顔見知りになったってだけだよ。体が弱かったんだ、彼女。

−レネ− ……で、わからないってのは?

−ラカン− 彼女は、教団の為とはいえ、自分自らが象徴になるようなことは望まない人だ。 ……事実、肖像画を描くとこには乗り気ではなかったらしい。なのに、絵描き手が俺に決まったと 聞いて承知したらしいんだ。それがわからなくてさ……

−ロニ− そうか……。……それはきっと君に気があるんだな。その御方は……。

−ラカン− な、何を言い出すんだよ。

−ロニ− そういうもんだよ、女心ってものは……。なぁ、カレル……? おい、カレル。

−カレルレン− あ、ああ……。

−レネ− ……なんだよ? 食わないのか? もう、焼けているぜ。

−カレルレン− ニサンの聖母……男冥利に尽きるじゃないか? ええ、ラカン。

−ラカン− よしてくれ……そんなんじゃ……ない……。な、何だよ?

−ロニ− 暗いな……君は。