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”母”


−リコ− 遅くなった。途中でバーラーがおかしくなっちまってな。 はやいとこ、エリィを助けてやろう!

−フェイ− ああ、わかってる。待ってろ、エリィ。今すぐ降ろしてやるからな。


−フェイ− ぐはっ!

−シタン− フェイ! しっかりして下さい!

−ビリー− 僕の銃で……!?

−バルト− な、何故、エリィ……?

−シタン− エリィ!? どうしてしまったんですか!? 何故こんなことを!?

−バルト− まさか……洗脳!?

−カレルレン− 洗脳ではないよ……私の身体はほとんどがナノマシンの群体で構成されている。 延命……そして”母”との合一の為にな……この程度の損傷などすぐに修復出来るのだよ。

−シタン− 母との合一ですって…?。

−カレルレン− その娘……エレハイムは我々の”母”なのだ。

−エリィ− そう。私は全てのヒトの母……

−フェイ− エリィ……!?

−バルト− 何を訳の解らないことを! 目を醒ませ! エリィ!!

−エリィ− 相変わらず鈍いのね……。いいわ。全てを教えてあげる。あなた方に神と呼ばれている デウス……。それは太古の昔、異星の人間のによって創造された”星間戦略兵器システム”。 自らの意志で行動し、対象となる惑星を制圧する目的で創られた自動兵器。それはラジエルの 記録を見て知っているでしょう? デウスは、その試験運転の時、暴走。その力を解放し、 一つの惑星をまるごと破壊したの。計り知れない戦闘力を持つ兵器、”デウス”に脅威を抱いた 創造者達は、デウスを強制的に起動停止状態とした。そのコア毎に分解し、暴走原因の調査の為、 星間移民船に載せ、他の星係にある惑星に移送しようとした。分かたれたデウスは抵抗した。 移送途中にその星間移民船を乗っ取ろうとした。でも予期せぬ創造者の抵抗にあい、船は大破。 そして、この星に墜落したの。墜落の際、大破もしくは地表との衝突による消滅を 免れられないを結論したデウスは、その動力炉”ゾハル”から中枢部分を分離。

−フェイ− ゾ……ハル……?

−エリィ− ”ゾハル”全てのギアを駆動する、スレイブジェネレーターの親機であり、 あなた達の使う、エーテル力の源。事象変移機関という、未来の可能性事象……エレルギーの 変位を自在に創り出すことの出来る無限エネルギー機関。

−バルト− 俺達のエーテル力の源だって!?

−シタン− すべてはその動力炉から得られる力だというのですか!?

−エリィ− ゾハルから分離した中枢……”生体電脳カドモニ”は原始のこの惑星に着陸した。 そして、来るべき日、再びデウスが復活するその生体素子維持プラント”ペルソナ”を使用。 そこから人間が創造された。それが天帝カインとガゼルの法院達……。

−リコ− 天帝とガゼルが、デウスから生まれた人間だと言うのか!?

−エリィ− 何故、ガゼルの法院はアニマの器と、あなた達の肉体を求めたのか解る?それはね……、 法院の肉体は、ヒトとなる前は”デウス”を構成する中枢回路の生体素子の一部だったのよ。 アニマと呼ばれるメス型とアニムスと呼ばれるオス型の生体素子。それはデウスの端末兵器としての 能力も兼ね備えていた。つまり、あなた達の使用していたギア・バーラーはその一形態なの。 アニムスであった法院は、神の復活の刻、分かたれたアニマと合一するはずだった……。でも、 500年前の戦いで、その肉体は失われてしまった。そこで、自分達の子孫であるヒトの遺伝子内に 息づく、自分達の因子を取り出そうとしたの。アニマと一つになる為にね。

−マリア− 子孫ですって!?

−バルト− それじゃあ、俺達は……!?

−エリィ− そう、あなた方ヒトは、全てカイン達の子孫……。ペルソナから生まれたカイン達は 子を産み、増やしていったの。いつの日にか再び、大破してしまったデウスを復活させるという プログラムに命じられるままにね。

−シタン− では、この世界の人間は、全てデウスを復活させる為に創造されたというのですか!?

−エリィ− そうよ。単にデウスを修復するだけじゃない。兵器デウスは、その構造の大半が生体部品で 構築されていた。変移した人間達が居たでしょ? 彼等はデウスの部品となるべく運命られたヒト達 だったのよ。

−ビリー− 僕達人間が……神の部品……。

−エリィ− そう、ほぼ全てのヒトは、デウスの部品となるべく運命られているのよ。でもあなた達は 違うわ。代を重ねることによってその本来の運命から解放されたヒト……と言ってもいいかしら…… 実際デウスの部品は足りなかった……。でも、それを補ってくれたのがカレルレン。彼の創り出した ナノマシンは代を重ねることによって希薄化した部品……ヒトの因子を補うだけではなかった。 新たな機能も付加してくれた。デウスは兵器として完璧なものへと進化したの。

−フェイ− エリィ……お前は一体……? 何故、そのことを……知って……

−エリィ− 私はミァン。刻の管理者。神<デウス>の代弁者。ヒトをデウス復活の為、あるべき 方向へと導く道標として生み出されたのだ私なのよ。

−バルト− 馬鹿な! ミァンはさっき……

−エリィ− 理解力に乏しいのね……ミァンの因子はね、全ての女性の中に息づいているの。世代を超越し、 ヒトを管理する者。前任者が死ねば、どこかで後任のミァンが覚醒する。そうなるように遺伝子に プログラムされているの。誰がその跡を継ぐかは確率の問題。フェイ。私も、そこのミァンも、 全ては同一の存在。デウスの部品。ヒトの管理者なのよ。解るかしら? お話はこれくらいにして おきましょうか。デウスは目醒めたわ。私はデウスを構成する部品の一つ。だから一つに ならなくてはならないの。

−シタン− エリィ! 何故それがあなたでなければならないんです。ミァンがデウスの部品ならば もっと以前に……

−カレルレン− 彼女の覚醒では不完全なのだよ。彼女はミァンであっても、 ”彼女そのものではないのだから”な。

−シタン− ”彼女そのものではない”……?

−エリィ− 行きましょう、カレルレン。後は、この星の文明を消し去り、元の場所へと還り、 最後失片、原初の地に堕ちた動力炉……”事象変移機関ゾハル”との合一を果たすだけ……。

−シタン− 文明の根絶ですって!? そんなことに何の意味があるというのですか!?

−エリィ− さあ……? 神を創造しうる存在は、いずれ障害となる。だから消去する。私には そうプログラムされているだけよ……。

−カレルレン− さあ……真の”母”のめざめの刻だ。

−フェイ− 待って……くれ……エリィ……

−エリィ− さよなら……フェイ。安らかな”めざめ”を……。