―― 地上のゲート、残るは一つか。
―― ラムサスめ、防ぎきれぬとはな……。
―― 何の為の存在か……。
―― 所詮、"塵"は"塵"。そのようなモノに何を期待できようか。
―― しかし"アニムス"のデータを入手する前に同調される訳にはいかぬ。
―― 然り。それでは型が取れない可能性が高くなる。
―― 過去がそうであったように……。
―― まだ、羊達を解き放つ訳にはゆかぬ。
−カレルレン− 障壁<ゲート>なぞどうでもよいではないか。
―― カレルレン……。
―― そうはいかん。このエテメンアンキにも動揺が拡がっておる。
−カレルレン− 民などという衆愚なぞ天帝の御言葉一つでいかようにも操れる。
―― 果たして、カインが受け入れるかな?
―― あれの肉体は、既に限界に来ておるからな……。
−カレルレン− いつものように模擬体<ダミー>を使えばよかろう。愚民共に違いなど判りはしない。それにたとえ障壁<ゲート>が破られたとしても、以前のような事態は起こり得ないよ。それよりも……メモリーキューブからの情報の中に非常に興味深いものがあったのだがな。
―― 何だ、それは?
−カレルレン− "母"だ。
―― "母"だと……?
−カレルレン− そうだ。恐らく、あのラムズ達の中に"母"が存在している。
―― 我等の"母"が他にもいるというのか? 何故今までそれに気付かなんだ……?
−カレルレン− "母"なるものの証……"母"の仮面<ペルソナ>は一定の年齢に達しなければ現われぬのだよ……そしてそれは"対存在"の転生したものである可能性が高い……。
―― "対存在"……。あのニサンの女のか……。
−カレルレン− そこでだ……。あのゼボイムのナノ技術の産物、"エメラダ"を使おうと思う。
―― タムズから回収したあれをか? 何故?
−カレルレン− 確認だよ"母"が言うには、あのナノマシンの群体……人造生命体"接触者"と"対存在"であった者によって創造されたらしい。4000年の昔にな。
―― "母"の記憶か……。
−カレルレン− そういうことだ。恐らくは何らかの反応が得られるはずだ。それに、たとえ何の反応も得られず、"エメラダ"が破壊されたとしても、データの採取は終わっている。あれを失ったところで何ら計画に支障はない。