TOPへ戻る 目次へ戻る

迎え火



“にいさん? 今から何を始めるの? それ火? 火なの?”

“おがらを焚いて、目印にしてもらうのさ”

“ふうん。何のためなの?”

“道に迷わないためだよ”

“誰が? 誰が道に迷うの?”

“父さんと母さんだよ”

“にいさん。だって、お父さんとお母さんは……”

“今日はね、故人の霊が家に帰って来ると、古来より言われている日なんだよ。 だからこうやって、シオンの所に迷わないで来られるよう、目印の火を焚くんだよ”

“あ、点いた。明るいね”

“これで迷ったりしないよ、父さんも母さんも。シオン……お前の元気な姿を見て、 父さんも母さんも安心しているよ”

“ほんと? にいさん”

“ああ、本当さ”














「兄さん! あと何年、その古来の風習とやらを繰り返す気? 去年も、一昨年も、そのまた前の年も……。」
シオンがいかにもうんざりという口調で、ジンの後ろから言う。

「シオン。何ということを言うのだ!」

「もう、うんざりよ! この第二ミルチアに作ったお墓も形だけ。 父さんも母さんも、ここから何万光年も離れたミルチアに眠っているのよ。 兄さん!! 自分の世界に閉じこもっていないで、少しは現実を見つめてよ!」

「シオン。どこに行く?」

「もうイヤよ!」

「シオン……。」


見守る人のない炎だけが、ただ、ジンの足元でチリチリと音を立てていた。





シオン……。目に見えるものが、全て真実とは限らない。
お前の中には、まだ誰にも明かされていない真実が隠されている。 データディスク……そして、Y資料……いつの日にか必ず、明らかにしてみせる。
あの時、何故、母が、父が、そして、お前が、あの動乱に巻き込まれねばならなかったのか。

……いずれ、この手で。必ず。

あとがき:
数ヶ月ぶりです(汗)。イベント過ぎると思いつく、いつものクセです。(^_^;)

ジンって、どうしてこう、和風な風習が似合うんでしょうねー(笑)。 EP1での唯一の登場シーン(苦笑)での、「今度の休みに墓参り」発言のおかげで、 すっかり、こういうキャラ扱いです。ここでは。
あの発言自体は盆休みをさしてないと思うのですが、聞いたときに、 うっかり「え? この世界設定って、実はお盆休みがあるの?」と本気で思っちゃったんですね。(^^ゞ
と、いうワケで、本気でお盆ネタを書いてみました。ちょっと思うこともあって、書きたかったとこもあるし。(^_^;)

で、シオンを大切にしたいジンと、そのジンの姿勢を鬱陶しいと考え始めているシオンを、書いてみました。

ついでに、掲示板にさらっと書いた、この話のパロディ版も載せておきます。(*^^)v

(パロディ版)

シオン「兄さん、何やってるの?」
ジン 「父さんと母さんが迷ったりしないように、目印に火を焚いているんだよ」
シオン「また、何か読んだのね。」
ジン 「……」
シオン「兄さん、何か大切なことを忘れていない? ここ、星が違うのよ! ミルチアから何万光年離れていると思っているの?」
ジン 「ギャフン」

……霊魂も、ワープ航法で来なきゃいけない時代。(^_^;)