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ひゃくます計算

ゲーム二次創作文章です。
本物の「百ます」を探されていて、たまたま、ここにいらした方は、 別なページに進まれてください。
ご迷惑おかけします。



30代も、そろそろ折り返し地点。
身体のアチコチが気になってくる、今日このごろ……


「あら、兄さん。何をしているの?」
エルザの食堂に入るなり、シオンが聞いた。

頭にはねじりハチマキ。手にはペン。ジンは一体何をやっているかと言うと……?
「久しぶりに店の在庫を整理していたら、こんなものが出てきましたからね。」

ジンは、手元のドリルをシオンに渡した。
「……にいさん……。」少々呆れ顔のシオン。

“100マス計算ドリル ―年齢を重ねたあなたの頭脳を活性化する―”

「これ、“何百年”前の本なわけ? 今なら、コネクションギアにダウンロードして使える 良いソフトが、いっぱいあるじゃないの。それに、本当に必要なら私が作るわよ。 この程度のソフトだったら。」

ギロリ! (ーー゛)
ビクッ! (>_<) (もしかして……まずった、私?)

「……問題を目で見て、意味を理解し、瞬時に問題を解き、手を動かし、直接字を書き、 それを目で見てパターン認識を行う……という一連の作業が、 脳の活性化を促(うなが)すのです…-~-~。」
やや、ジンの言葉の語尾が震えているように、思えてしまうのは気のせいか?

「……もう、何を言ってもムダね。(+o+)」シオンは、この件でジンに構うのを止めた。

「……先人の、大切な生活の“知恵”ですよ……。」もう誰も、聞いてはいない。



数日後

「シオン、シオン!!」
シオンが食堂に入ってくるなり、中に手招きする人がいる。

「何? 兄さん。(……それ、まだやってたんだぁ)」
先日の“睨まれ事件”もあるので、懸命にも、口に出さないシオンである。

「見てください!! やり始めの頃よりも、1分以上も早くなったんですよっ!」
ジンは満足げな笑みを浮かべ、とても嬉しそう……というか、さらにジジくさい。
もちろん、そんなことは、懸命にも、口に出さないシオンである。

「……よかったね……。」消え入りそうな声で、こう言うのが精一杯。
20代前半、それも“青春真っ盛り”のお年頃の彼女に、“人生の(体力的な)頂点を 過ぎようとしている”人間の気持ちなんて、(実感として)分かるワケがないのだ。

ガマンにガマンを重ねたけれど、やっぱり口が滑った。
「……活性化させたいなら、今は良い薬がいっぱい出てるわよ。ウチ(ヴェクター)から(爆)。 その方が手っ取り早いし。」

「シオン!」
キッ!
今度は“武道家”の一瞥が飛んできた!! ……こっちの方がコワイ〜

「己の身体(しんたい)は、己自身で鍛え上げていくものです。私を見て御覧なさい!  日々の厳しい鍛錬の結果、たとえ相手がギアだろうと……。」
「あー、またその話? ケイオス君から聞いているわよ。」クドクドと話が長くなりそうだから、 即座にジンの話の腰を折り、ブッちぎろうとするシオン。その素早さは、 彼女もまた幼少の頃に、祖父に鍛えられた成果だろうか?

……という、傍(はた)から見れば、なんとも他愛(たわい)ない兄妹の会話をよそに


「シオン。先ほどから、アレンがあなたのことを探しているのですが。」
KOS-MOSが入ってきた。

「あ、分かったわ。ありがとう。KOS-MOS。」
「お役に立てれば幸いです。」

KOS-MOSがおもむろに、テーブルの上に置かれたドリルの次のページを開いた―――。


……4.98秒!!


「KOS-MOS! あなた何をやっているのよ! (そんなに即座に解いちゃったら、兄さん怒るわよ)」


……4.98秒

……4.98秒


アゴが外れんばかりに驚いているジン。


……4.98秒

……4.98秒

……4.98秒


ジンが刀の柄(つか)に手をかけた。

「飛…モガッ(燕)」。
すかさず、シオンが後ろから手を回し、ジンの口をふさいだ。

「(兄さん。KOS-MOS相手に大人気(おとなげ)ないわよ……)」
「ですが……シオン……。」
そんな兄妹の葛藤をよそに、相変わらず“ヒトとは別の次元”で活動するKOS-MOS。

「ジン。これがドリルの趣旨どおりに頭脳の活性化に役立つとは、とうてい考えられないのですが。 このように回りくどい手法を取るよりも、薬品、もしくは医療機器を利用を考えた方がよろしいかと 思われます。」
さらにたたみ掛け、ジンの神経を逆撫でるKOS-MOS。

「旋風刃天…モガッ(…しょう)」。
もう一度、シオンが後ろから手を回し、ジンの口をふさいだ。

「兄さん。お願いだから抑えてよ……(涙目)。この子、まだプロトタイプだから。 兄さんがこの子を壊しちゃったら、この子の損害賠償、この時とばかりに、 全部ヴェクターから私に請求が回ってくるのよー。そしたら、私、一生タダ働きよ(泣)。 この子の開発費、“どヒンシュク”を買うくらい使いまくってるんだから。」





……知られざる真実が、ここにあった!!

恐るべき陰謀!

こうやってヴィルヘルムは、ヴェクター社員を安月給でこき使うのであった(嘘)。





「ふえーっくしゅんっっっ!!」


「お風邪を召されましたか?」
「僕に風邪は、ありえないよ。君は、そうは思わないかい?」
ヴェクターCEO執務室。相変わらずのある意味こちらも“ヒトとは別の次元”で生きている ヴィルヘルム。

「また、誰かが、僕のウワサをしているのかも、知れないね。」
「(人非人ですから。ヴィルヘルム様は。)」
「ん、何か言ったのかい?」
「いえ。何も言っておりません。」

……ここにも、死ぬまでどころか、「死んでもヴィルヘルムに“こき使われてる元人間”」が いたりする……
……それは、なまじ、KOS-MOSアーキタイプを暴走させ、バラバラに破壊させた故(ゆえ)なのかもしれない……。

あとがき:
はい、元ネタ分かった人〜! いるかっ!!

実は、Dr.スラ○プの「スコップ君」初登場エピソードです。
てこずってた超ムズカシイ問題を、あっさりアラ○ちゃんに解かれてしまって(ロボットなんで実は数学だけは得意)、 ショックで少々オカシくなってしまう……というネタがキョーレツに面白かったんで(笑)。
んで、恐ろしいことに、コレ声優さん(田中さん)つながりネタだったりする……。(^^ゞ

第一案では、シオンの涙目までがオチだったんです。でも、 「あれー? 死んでも“こき使われてる人”がいるじゃん。(^_^;)」と気が付いて、 ケビン先輩が最終オチになりました(笑)。
きっとですね。誰かが怒って壊してしまうように、わざわざ“あーゆー性格設計”になってるんですよ。 KOS-MOSは(笑)。
そうやって、開発費を浮かせるヴィルヘルム。初期のレアリエンも、 同様に開発費を浮かせたのかも知れないですねー。(^_^;)
だから、(初期特別タイプの)カナンは“あーゆー性格”(爆)。

……ラクティスの頃は、さほど性格悪くなかったと思ったけどなぁ。

ちなみに、ジンの技はEP2の時のモノを採用してます。時間軸はEP2ということで(笑)。
ただ、EP2は積みゲーになっていて、よく分からないんです。どんな技でしたっけ。(^^ゞ