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贖罪



ポタリ。

ポタリ、ポタリ。ポタ、ポタポタ……

ずる、ずるずるっ。
「はぁ、はぁ……。」
壁にもたれ、崩れ落ちていくジンの身体。マーグリスとの戦いで受けた深手。

「……もはやこれまで……か……。だがいい。ディスクはもう無い。 データはきっと彼らが……ヘルマー中将の元に持ち帰ってくれるだろう。 中将ならば、データ解析、全てを白日のもとにさらしてくれる。……この事象の全てを……。」
ジンは大きく息を吐いた。最期の……?

「通信? いや、伝言か?」
ジンは懐からコネクションギアを取り出した。
―――再生される音声―――

“ジン”
“ジン”
「父さん?」
“くそ 繋がらないのか―――”
「背後に獣?」
“ジン このメッセージを聞いたら すぐに戻って来てくれ”
“シオンを シオンを助けてやってくれ”
「咆哮(ほうこう)が近づいている……。」
“頼む 時間がない 早く”
“うーーーぐぅぁーーーーーっっ!”
―――ノイズとともに“音にならない鈍い音”が混じる―――
「……父さん……」

ジンはもう一度、初めから聞きなおす。

“ジン”
“ジン ………”
いたたまれず、自分のコネクションギアから目を逸(そ)らす。

「父さん……。」

けれども、逸らせない“現実”がそこにはある―――

「シオン!」

―――父から託された宝物。

刀を杖にして、ジンは再びそこから立ち上がった。
「まだ、死ぬるわけには行かぬようですね。」





「シオン!」

グノーシスの波をかき分けると、光を失った“生き人形”がそこに座っていた。 ……“力”の全てを使い果たして。

「シオン! 私だ! お前の兄だ。シオン、私が分かるか?」
ジンはシオンの両肩に手を乗せ、正面からその顔を見る。

シオンの身体は温かい。まだ血の通った“ヒト”だ。“塩の柱(グノーシス)”ではない。 けれども、この子の心は……?

「シオン!」
ジンはシオンの身体を、力いっぱい抱きしめた。魂の無い人形。光を映さない瞳。

「シオン……すまない。」
ジンは一言詫びると、そのままシオンの身体を抱き上げた。





シオンを連れ出すジンの後ろで、瓦礫と化していくラビュリントス……。

シオンの心と想い出を、その迷宮(ラビュリントス)に葬ったままに―――

あとがき:
唐突に書きたくなったんです(涙)。発作です。発作。(^^ゞ
EP2では、たしか贖罪うんぬんと兄さん言っていたよーな気がするんですけど、 DS版1・2では、その台詞がありませんね(笑)。
時間軸を少し修正したんでしょうか? ジンがシオンの救出を決意したのはマーグリス戦前から、 マーグリス戦後に変更したようにも取れますね。

EP3でスオウの通信が繋がらなかったのは、マーグリスと戦っている最中だったから、 と勝手に理由を妄想して、お話を作ってみました。(*^^)v