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目覚めの刻(とき)

U.R.T.V.ネタです



「結局、回収したU.R.T.V.は、この2体のみなのですね。」


2つのリアクター。2つの同じ身体。そして……“赤”と“黒”。

「そうだ。起動可能な完全な形で回収できたのは、この2体だけだ。 その他の……体は、暴走・破壊・殺戮の果てに全て連邦軍に破壊された ……そうだったな。ケイオス。」

「その通りです。」

「私もあの場所で暴走した標準体に遭遇しております。幼い“外観”とは裏腹な 高いスペック……。並みの兵士では適わなかった。さらにこの2体は、 その標準体を遥かに上回ると言われる変異体……。 そのスペックは計り知れないものがある。この2体が“暴走しない”という 保証がされぬ限りは……。」

「ケイオス?」

ヘルマーに名を呼ばれ、ケイオスは肯いた。
「この2体は暴走しません。今までも、そしてこれからも。それは僕が保証します。 僕たちは、彼らを“内部”で発見しました。2体ともその機能のほとんどを停止していましたが、 暴走を示す内部変化は一切見受けられませんでした。……それに……。」

「それに?」

「彼らには“暴走できない理由”がありますから。」

「暴走できない理由?」

「ええ。それが、彼らの“今”の存在理由でもあります。」

「……“白”か。現在行方不明の。」

コクン。
ケイオスが肯いた。

「ケイオスが保証するならば大丈夫だ。……それにしても、2体とも損傷が激しいな。 特に“黒”はズタズタと言ってもいい。 まるで、とつてもなく激しい力がぶつかり合ったようだ。」
「“赤”“黒”の両体とも、暴走した標準体U.R.T.V.と交戦し、 破壊していたという目撃証言があります。おそらくはそのためでしょう。」
目の前の会話に、ケイオスは一瞬、目を閉じた。 (……違う。……彼らは……“たった一人”のために……)

「……なるほど。……ところで、大尉はどう考える?」

「もうその肩書きは、私のものではありませんよ。」ジンは苦笑した。

「そうかも知れぬが、これからも色々と尽力してもらいたい。 ……その方が、大尉にも好都合であると思われるのだが。 ケイオスから聞いているが、大尉自身も“追っている者”があるのであろう?」

「ええ。……そうですね。この提案、受け入れるとしましょう。」

ヘルマーは笑みを浮かべた。
「……では、話を続けよう。この2体は、あのゾハルと直接接触を果たしている。 しかしだ。この2体は、ゾハルから何の影響を受けていないように見える。 他の接触した全てのU.R.T.V.が暴走したにも関わらずだ。 むしろ、先ほどの話の通り、2体は汚染体に対して冷静に排除行動を取っている。」

「……ほう。それは興味深い話ですね。」

ジンはしばらく間を取ってから言葉を続けた。
「……では、ヘルマー中将は、この2体こそ“あの任務”にふさわしいと、お思いなのですね。」
「そうだ。局所変異事象により、オリジナルゾハルこそアビスの底に堕とされたが、 U-TIC機関は多数のゾハルエミュレータを所有していると聞く。そうだったな、大尉。」

「ええ。私の調査で判明しているエミュレーターの数は、全部で12基。 オリジナルゾハルに対し、その出力は比べ物にならぬほど小さいが、 それでも、小規模の局所変異事象程度ならば充分に引き起こせます。 当然、連邦の脅威となることでしょう。 ……かと言って、エミュレーターといえども、常人には近づくことすらできないシロモノ。 “オリジナルと接触しても暴走しなかった”この2体ならばそれが出来ると、 おっしゃりたいのですね。ヘルマー中将。」

「……そうだ。U.R.T.V.による第3次降下作戦は事実上失敗した。 行き場の無い“兵器”には、ふさわしい任務となるだろう……。」
ヘルマーのため息がこぼれた。



――――― 赤きと黒きは未だ深き眠りの中 ―――――



12基のエミュレーターが全て揃った時、彼らの運命を指し示す羅針盤が動き出す……



― GO! TO THE EP1!! ―

あとがき:
話しているのは、ケイオスとジンとヘルマーです。
なんと! U.R.T.V.ネタのくせに、ルベドとニグレドの台詞は一切ありません(爆)。 なんせ、リアクター内で修理中(違!)なもので。(^^ゞ

冗談はこれぐらいにしておいて、Jr.とガイナン(名前を言い換えてゴメン)が、 何故、「エミュレーター回収と、U-TIC機関の残党の制圧任務」に付くことになったのか、 大真面目に考えてみたかったんです(笑)。……ジンがここに出張ったのは、 このHPならではのことなんで、笑って読んでやってください。

実は、この後にも最初の任務のストーリーが続くんですが、書ける自信がないので、 まずはここまでと、一つの話としてまとめてみました。

このネタを思いついたのは、FF2のサントラを聞いたからなのです(爆)。
帝国軍に追い詰められ全滅したキャラクター達を、ミンウが「レイズ!」と 蘇生したところからFF2の物語が始まるんですが、サントラ(PS版)を聞きなおした時に、 そのシーンと背景が、U.R.T.V.のこの2人に妙にダブったんですよね。
だからこの話は、 ズタズタに引き裂かれたU.R.T.V.の蘇生とその行く末のお話なんです。(^^ゞ

……ち、な、み、に(笑)。

DS版の用語集によると、ゾハルエミュレーターの数え方は「器」のようです。(^^ゞ
いちおー兵器転用できるからねー
でも、私のイメージでは「基」の方がしっくりくるので、 この話では「基」で行かせて頂きます。(*^^)v