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名水の泉

元ネタHPさんのOKを頂きました。v(^^)v



お茶を入れる名水を求めて旅に出たジンとケイオス。

「これもダメだ……。」
なかなかジンのお眼鏡に適(かな)う名水には出会えない。



ある時

ジンが足を止め、おもむろに深呼吸。
「ここの空気は、また、特別に澄み切っていますねぇ。まるで、ケイオス君。 貴方の瞳の様です。ごくありふれているようでいて、なかなかお目にかかれない……。 このような場所にある泉の水は、きっと格別の味がしますよ。」

「ジンさん。あなたにはそれが分かるのですか?」 ジンの後ろから、チョコチョコと付いて来たケイオス。
「ええ分かります。伊達にあちこち放浪してはいませんから。 ほら、見てください。周りの木々も気持ち良さそうに育っている。 葉の色、木々のもつエネルギー、全てが今まで訪ね歩いた他の場所とは明らかに違っている。 ここには独特の磁場がある。おそらく、太古の時代には、“龍穴”と 呼ばれた場所でしょう。」
ジンは既に何かに魅せられているようだ。

ケイオスは、こっそりポシェットに忍ばせてきたガイドブック…「名水百選 第二 ミルチア編 −“おいでよ! 第二ミルチア”計画推進委員会編纂−」を開き、 パラパラと該当ページを探した。
「……ここは……どうやらNo1を誇る名水の場所だけど……これは?」

一方、ジンは茂みをかき分け、その奥に泉を見つけた。
「やはり。」
泉の水は無色透明でどこまでも澄んでおり、まるで泉の底まで見えるようである。 周りの空気はひんやりと気持ちよく、一歩、また一歩と近づくだけで、泉の水の 心地よい冷たさが肌に伝わってくる。

ケイオスが、ガイドブックの補足マークを追ってみると
“第二ミルチア1の名水ですが、以下の理由で近づいてはいけません。ここは……”
と書いてある。

「ジンさん。ここは止めておこうよ。」ガイドブックから顔を上げたケイオスが、 そう言ったときには遅かった。
ひょいひょいと身軽な身のこなしで降りていったジンは、 泉の縁(へり)に両膝を付き、両の手ですくった水を飲み干さんとする所だった。

ケイオスはジンのその様子を見て取ると、すぐさまジンの傍らに駆け寄り、
「ごめん。ジンさん。」
その身体を押した。……力の限り!!

わっわっわっ! あぁっ!
まさか、ケイオスに突き落とされるなんて思っても見なかったジンは、 あっさりバランスを崩し、泉の中へ――。

どっぽん!!

ぶくぶくぶく……。
泡が上がってくる。



“……ただし、若く美形の男性がここに落ちると、二度と上がってきません……”
ガイドブックにはそう書いてあったのだ。

「ジンさんなら、“絶対”に大丈夫だよね……。」

ケイオスの心中は、ドキドキハラハラ……。
書いているこっちも、ドキドキハラハラ……。

ジンは一向に上がってこない。本当に大丈夫なのだろうか?
EP2では、とても30代とは思えない、かなりの若作りだったが、それが悪かったのか?

「あまり深くはなさそうだけど。」
ケイオスが泉の中を覗き込んでいると……。

ピカッ!!
いきなり、泉の中から閃光が走り、ケイオスは目が眩んだ。

――――― ケイオス ―――――
――――― あなたの落とした人は、ジンさんですか? それとも、 “金さん”ですか? ―――――

見ると、泉の真ん中に女神と思(おぼ)しき女性が立っていた。
女神の右側には“旅のジンさん”。
女神の左側には、“桜吹雪の金さん(右肩露出)”が、 「山吹色の小判(もちろん帯つき、黄金;笑)」がぎっしり詰まった千両箱を、 抱えて立っている。当然、足元にも同じ千両箱がたっくさん積み上がってる。

――――― 答えなさい。ケイオス ―――――

「僕が突き落としてしまったのは、僕の大切なジンさんです。」

――――― よろしい ―――――
――――― ケイオス、あなたは正直者ですね ―――――
――――― では、あなたには両方を差し上げましょう ―――――
――――― さあ、迎えに来なさい ―――――

「いいえ。僕には、ジンさんだけで充分です。その代わり……。」

――――― その代わり? ―――――

「ここの泉の水を僕達に分けてください。水を入れる器も一緒に。」

――――― 分かりました。ジンと二人で好きなだけ汲んで御行きなさい ―――――



「ケイオス君。何もこんなに貰って行かなくても。」
右手に1つ。左手に1つ。背中に2つ。18リットルのポリタンクを各自持ち、じみ〜に歩く、 ジンとケイオス。

「あそこの女神は非常に気難しいそうです。貰えるときに貰えるだけ貰っておかないと。 勝手に飲んだと知られたら、泉に飲み込まれ二度と戻ってこられないと、 名水百選ガイドブックに書いてありましたから。」

ああ、そういえばここは、とジンも言った。
「以前に読んだ秘境マップに載っていた場所のようですね、ここは。 確か、水を飲まなくても男性が泉に入ると二度と来られないとか何とか……。」
「ジンさん。それは少し違いますよ。戻ってこられないのは、“若くて美しい男性”だけですから。」
「と、言うことは……。」

「ジンさんは、もう“若くない”ということですって。 現に“今ここにいる”ことが、その証明ですよ。 (落ちたのが)僕だったら、はたして女神が僕のことを帰してくれたかどうか……。」
ケイオスは(いつもの)微笑でそう言った。

ケイオスに言い切られてしまったジンは、というと……。

「ケイオス君。あなたは、そう、澄ましていますが、 知り合ってから14年経っても一向に歳を取らない貴方は、 一体何歳なんでしょうねぇ……。」

ジンさん、それは言ってはいけない“ゼノサーガのお約束”……。

そこを追求すると“ゼノ宇宙(ワールド)のフェイルセーフ”が発動しますよ(笑)。

あとがき:
18リットルが8缶、で合計144リットル……約、144キログラムの水
そんなにもらってきて、どうする気だったんでしょうね。ケイオスくんは(笑)。

と、いうことで、「ちゃっかりケイオス」を一度書いてみたかったんです。
一応、ジンを魔の手(嘘)から救うために突き落としたんです。きっと。 ジンと名水の両方を計算に入れていたんでしょうね。欲張りだなぁ。 伊達に長く存在してはいないのですね。
持ち帰ったその後の名水は、シェリィとメリィに高く売りつけた……かもしれません(笑)。 「お肌に良い女神の水」ということで。……それなら私も欲しいかも。(^^ゞ

「龍穴」、ジンの台詞に出てくるコレですけど、実は風水用語です。 ふーすいはよく分かんないけど、とにかく、いるといい気分になれる場所だろうと 勝手に解釈してます。ジンさん何でも読んでいそうだから、きっと知っていたんでしょう(笑)。

最後に、モコさん、この「金の斧」ネタにOKありがとうございます(感謝)。