またまたバカ話です
――― 第7章 ―――
[フェデラル・リポート05]
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とある人物の助力を得て重篤神経症治療施設のID取得に 成功した。
Y資料を奪取するにあたっての内偵を兼ねてである。
所内の話を聞く限りではミズラヒ博士のウ・ドゥに関す る研究も最終段階に入ってきていることが想像できる。
ミズラヒ博士はウ・ドゥと人のインターコネクションと して特別な調整を施したレアリエンを天の車で量産してい るらしい。
肝心な人の方は適合者の発見に少々難を要している。
ウ・ドゥとのリンク、レアリエンとの相性、その両方を 満たす人材を発見するためにはU−TIC機関も形振り構って いられないようだ。
…私の母『アオイ・ウヅキ』も適合者としてこの施設に 収容されている。
…妹には真実を知ってもらいたくはない父も辛いだろう。
任務に支障をきたすとまずいのでこの事は暫く考えない でおきたい。
まずはY資料の所在を明らかにしなくては。
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「兄さん……。」フェデラル・リポートを読み進めるシオンの手が、ブルブルと震えてくる。
誰もが沈痛な面持ちで、そんなシオンの後ろ姿をじっと見つめる。
「シオン。」すかさず背後から声をかけるジン。
「兄さん、コレ……。」
シオンがクルリと振り向いた。
皆が思わず息を呑む。
「兄さん、これ全然なってないじゃないのっ!」
シオンの第一声に“目が点”の一同。
「『報告書』というのはねぇ、事実だけを報告するものなのっ! あくまで客観的な
視点で事実だけを書かなきゃ! 報告書の
中に自分の意見や想いなんか入れてちゃ駄目でしょ! 一体、誰に読ませるつもりで
書いたのよ! 学生じゃないんだから――書き直し!」
「主任……」
いつもの主任だ……と思うアレンであった。
ああ、仕事の鬼……シオン。
この感動的な“兄の想い”をぶち壊すとは、あな恐ろしや。
あとがき:
以前、チャットで「15年前のジン(兄:当時21歳)のフェデラル・リポートを、
元主任のシオン(妹:現在23歳)がツッコミを入れたりして」と笑った話です。
一応、書いた当時の兄貴よりは年上になる計算なので、兄貴のアラもよ〜く見えるということです(笑)。
で、これは入社当時、実は私が上司にツッコミを入れられた内容そのまんまです。
これから社会に飛び立つ人は、気をつけましょうネ。気をつけないと、
案外やってしまいがちな失敗です。実際ジンもやっているワケだし(笑)。
ホント真面目な話、7章でツッコミは入れてました。「こんな報告書でいいの? 兄さん〜。」
つーか、コレ日記? まさかヘルマーに提出するつもりじゃなかったんでしょう?
……その前に、ゴミ箱に隠すのは止めてくれ(笑)。